腸内アンモニアの代謝


大腸で発生したアンモニアはかなりの割合で体内に吸収されます。

私たちの体には、腸で発生した有害なアンモニアを効率よく回収し、無毒化するシステムが備わっています。

1. アンモニアの吸収ルート

大腸には100兆個以上の細菌(腸内細菌)が住んでいます。

これらが未消化のタンパク質や、血液から分泌された尿素を分解することでアンモニアが発生します。

吸収の仕組み: 大腸の粘膜から吸収されたアンモニアは、そのまま全身に回るのではなく、「門脈」という太い血管を通って、直接肝臓へと運ばれます。

肝臓での処理: 肝臓に届いたアンモニアは、「オルニチン回路(尿素回路)」によって、毒性の低い「尿素」へと作り変えられます。



2. 吸収された後のゆくえ(再循環)

肝臓で尿素に変換された後は、主に2つのルートをたどります。

腎臓から排出: 血液に乗って腎臓へ運ばれ、尿として体外へ出されます(これがメイン)。

腸への再分泌: 一部の尿素は再び腸管の中へ分泌され、再び細菌によってアンモニアに分解されるというサイクル(腸肝循環の一部)を繰り返します。



3. もし吸収・処理のバランスが崩れたら?

通常、肝臓が元気であればアンモニアが全身に漏れ出すことはありません。

しかし、以下のようなケースでは問題が起こります。

肝機能の低下(肝硬変など): 肝臓でアンモニアを尿素に変える力が落ちると、血液中のアンモニア濃度が上昇します。

便秘: 便が長く腸に留まると、それだけアンモニアの発生量と吸収量が増え、肝臓に負担がかかります。


「腸内環境」を整えることが肝臓の健康に良いと言われるのは、まさにこのアンモニアの発生を抑えるためでもあります。


大腸の腸内細菌はアンモニアを無毒化した尿素を何故またアンモニアに分解するのか

せっかく肝臓がエネルギーを使って「無毒な尿素」に変えて尿として捨てようとしているのに、一部の腸内細菌はそれをわざわざ「有毒なアンモニア」に逆戻りさせてしまいます。

一見すると無駄なことをしているようですが、これには細菌側の切実な理由があります。


1. なぜ細菌は尿素をアンモニアに戻すのか?

腸内細菌(特に一部の悪玉菌やヘリコバクター・ピロリなど)は、「ウレアーゼ」という酵素を持っています。

細菌の狙い: 細菌にとってアンモニアに含まれる「窒素」は、自分たちの体(タンパク質やDNA)を作るための大切な材料です。


プロセスの詳細

1. 血液から腸管内にしみ出してきた尿素を、細菌がウレアーゼで分解。

2. 分解によってアンモニアと二酸化炭素が発生。

3. 細菌はそのアンモニアを「エサ」として取り込み、増殖します。



2. 体内への再吸収(いたちごっこ)

細菌が使い切れなかった余分なアンモニアは、再び腸壁から吸収されて血液に入り、門脈を通って肝臓へ戻されます。

肝臓: 「また戻ってきたのか…」と、再びエネルギーを使って尿素に合成。

血液: 尿素として循環。

: 再び細菌がアンモニアに分解。

このサイクルを「尿素の腸肝循環」と呼びます。

健康な状態であれば肝臓の処理能力が勝るため問題ありませんが、肝臓が弱っている人にとっては、この「終わらないリサイクル」が大きな負担になります。



3. アンモニア発生を抑えるには?

腸内でのアンモニア過剰発生を防ぐには、以下の環境作りが重要です。

腸内を酸性に保つ: 善玉菌(ビフィズス菌など)が作る乳酸や酢酸によって腸内が酸性になると、アンモニアは「アンモニウムイオン」という吸収されにくい形に変わり、そのまま便として排出されやすくなります。

エサ(タンパク質)を控える: 未消化のタンパク質はアンモニアの最大の原料になります。

食物繊維を摂る: 便通を良くしてアンモニアが吸収される時間を短くします。


興味深い事実: 肝硬変などの治療では、わざと腸内を酸性にする薬(ラクツロースなど)を使って、アンモニアが体内に吸収されるのをブロックすることがあります。

尿素すらも無駄にしない細菌のたくましさは驚きですが、私たちの肝臓からすれば、少し休ませてほしい仕組みかもしれません。