85種類の鍼を操り難病に挑む


当院では85種類の鍼を扱うことが出来るのです。(たぶん日本一)
大きめのワゴンに載せると写真の通りとなります。

何故このように多くの鍼が必要なのでしょうか? 

それは「凝り」には重症度があり、それこそ、一億人いたら一億通りの「凝り」の状態があるからなのです。

それぞれの患者さんの「凝り」の状態に合わせて鍼の太さ、深さ、本数を決めていかなければならないのです。

全ての患者さんの「凝り」の状態に合わせた治療法を提供するには全ての鍼が扱えないと無理なのです。

なかなか理解することは難しいとは思いますが、少しでも鍼治療について理解して頂き、難病に苦しむ患者さんが一人でも多く救われることを願って止みません。




「凝り」を解消するには?


「凝り」とは筋肉中に老廃物(尿)が溜まってしまい、硬くなってしまう現象です。

本来は代謝によって腎臓から尿として体外に排出されるべき老廃物が筋肉中に溜まってしまい、硬くなるのです。

筋肉が硬くなると周辺の神経や血管を圧迫してしまい、痛みや痺れを引き起こします。

これを絞扼障害と呼びます。

絞扼障害は肩こりを代表されるように様々な症状(不定愁訴)が現れます。

「凝り」を解消して圧迫を受けている神経や血管を解放してあげれば様々な症状(不定愁訴)はなくなるのです。

ではどうしたら筋肉の「凝り」を解消できるのでしょうか? 

生理学的に言えば細胞内に溜まってしまった老廃物を細胞外液に戻して、リンパ血管系の流れに乗せ、腎臓まで送り込み、尿として排出すれば良いのです。

その具体的な方法としては物理的な刺激を加えるしかないのです。




「凝り」を解消するには物理的な刺激しか方法はありません。


溜まった老廃物を排出させる薬(化学的な刺激)はないのです。

筋肉に物理的な刺激を加えるしか方法はありません。

物理的な刺激としてまず皆さんが思い出されるのが指圧やマッサージ、整体などの手技ではないでしょうか?

その他に温泉療法、電気療法などがあげられます。

鍼治療は最後の最後に考えるのではないでしょうか?

事実、当院でも散々他の治療をしてきて治らないからと言って最後に鍼治療を選択される方が多いのが現状です。

しかし物理的な刺激としては鍼治療が最強なのは言うまでもありません。

鍼は直接筋肉に刺激を与えられるので効果は桁違いです。

ただし、直接体に鍼を指す行為はかなりハードルが高いので皆さん躊躇するのでしょう。




「凝り」には重症度がある


鍼灸は筋肉の「凝り」に直接刺激を加えて老廃物を体外に排出させる作用があります。

マッサージや整体などの手技も「凝り」をほぐして柔らかくすることを目的としています。

しかし体験したことがある人は分かると思いますがマッサージや整体ではその場は気持ち良いのですがまたすぐに悪くなったり、何回か通っても改善しなかったということがあるはずです。

それは何故かと言いますと「凝り」には重症度があり、その重症度に合わせた適切な刺激が必要だからです。

「凝り」の重症度の判定には深さ、硬さ、量の三つの判定要素があります。

一般的には重症になれば老廃物が多くたまり、そして硬くなり、体内深くに沈んでいきます。

「凝り」が軽度の場合は老廃物は体表表面にあって、量も少なく、柔らかいので指圧、整体などの手技が効く場合もあります。

体内深くに沈んだコリは表面上の手技では解消できないので、鍼治療しか方法はありません。




鍼治療は患者さんとの二人三脚で


「凝り」の重症度を測定する機器はありませんので、治療は患者さんとの二人三脚でしなくてはならないのです。

そして一番重要な事ですが「効く鍼」を打たなければ意味がないと言う事です。

「効く鍼」を打つには鍼の選定が全てです。

一般に「凝り」の重症度が高くなると鍼の痛みを感じなくなります。

当院で一番太い鍼は43番鍼で直径1ミリありますので釘に近い太さがありますが、打っても感じない人もいるのです。

逆に細い鍼でも痛がる人もいます。

以前の鍼灸治療は問診、切診、脈診、舌診などで治療方法の選定をしていました。

私自身も長らく、この診察の結果で鍼を決めていましたが、患者さんの数が増えるにつれて治りにくい人が多くなってきたのです。

そこでふと、閃いたのですが、鍼の痛みの感覚は術者にはわからないということです。

鍼の刺激が実際に患者さんに効いているのか?効いていないのか?は患者さんに聞くしか方法はありません。

それから患者さんに鍼の痛みの度合いを聞きながら治療をするようになったのです。

そうすることによって治療効果が上がったことは言うまでもありませんが、過剰刺激でいわゆる「はり返し」や「もみかえし」のような症状が格段に減っていったのです。

鍼の刺激は強くてもダメですし、弱くてもダメです。

鍼刺激が丁度良い感じ、良い塩梅とでも言いましょうか、心地よい痛みがあれば一番いいです。

分からなければ刺さっている感覚があって嫌でなければOKです。

効かなければ意味をなさないので感じない鍼と強過ぎる鍼はだめなのです。

鍼の本数も患者さんの満足感が出るまで行います。

このようにして患者さんの感覚を頼りに鍼の太さ、深さ、本数を決めていけば真に効く鍼治療を受ける事が出来るのです。

西洋医学などでは診断、治療と医師の進めるままに行うので最初は戸惑う患者さんが多いのですがやってみると皆さん積極的に一緒に治療を楽しんでくれるようになります。

慣れてくると今日は何番の鍼でお願いします、とか今日はこれくらいの鍼で終わりで大丈夫です、とか自身で治療のコントロールも出来る等になってきます。



鍼治療は自分自身でコントロールするものです。


健康全般について言えることですが、自分の健康は自分自身でコントロールするものなのです。

医師に言われるがままに薬を飲んだり、治療するものでは本来あるべき姿ではないのです。

鍼灸治療はその最たるもので、患者さんと一緒に治療効果を確かめながら進めていきます。

たまに患者さんの中には「お任せでお願いします」とこちらに治療を丸投げしてくる方がいらっしゃいますが、鍼灸治療にお任せはないのです。

また中には遠慮してなかなか言ってくれない患者さんもいますので「鍼の感覚を遠慮なくズケズケ言ってください」とか「鍼の感覚が分からなければ分からないと言ってくれても大丈夫ですよ」などどお声がけしながら治療を進めていきます。

最終的に患者さんにはこう言います。

「私の鍼の技術を使って自分の体をコントロールしてください。人生と一緒で他人にコントロールされないでください」と。