アンモニアの代謝
アンモニアは筋肉の凝りの最大の原因
体内で有害なアンモニアが生成される主な理由は、一言で言うと「たんぱく質(アミノ酸)の分解」です。
私たちの体はエネルギーを得たり、新しい組織を作ったりするためにたんぱく質を利用しますが、その過程でどうしても「ゴミ」としてアンモニアが発生してしまいます。
このアンモニアが筋肉の「凝り」の最大の原因となるのです。
詳しいメカニズムを整理して解説します。
1. アミノ酸の代謝(脱アミノ反応)
食事から摂取したたんぱく質は、体内でアミノ酸に分解されます。
アミノ酸をエネルギーとして利用したり、他の物質に作り替えたりする際、アミノ酸に含まれる「窒素(N)」が
切り離されます。
これがアンモニア(NH3)の正体です。
2. 腸内細菌による分解
腸の中に残った食べカス(たんぱく質)や、腸に分泌された尿素を腸内細菌が分解することでもアンモニアが発生します。
便秘などで内容物が長く腸に留まると、アンモニアの発生量が増える傾向にあります。
3. 筋肉での代謝
激しい運動をした際、筋肉にあるアデノシン三リン酸(ATP)が分解されたり、アミノ酸がエネルギーとして使われたりする過程でもアンモニアが生成されます。
この筋肉中でのアンモニア生成が「凝り」の最大の原因であることは言うまでもないでしょう。
☆筋肉内でのアンモニア生成(2つの主要ルート)
筋肉が激しく動くと、以下の2つの経路でアンモニアが発生します。
① プリンヌクレオチド回路(エネルギー消費の副産物)
ATPの分解プロセスそのものです。
激しい運動でATPが消費され、ADP(アデノシン二リン酸)を経てAMP(アデノシン一リン酸)が増えると、酵素(AMPデアミナーゼ)によってAMPが分解されます。
この分解の瞬間に、アンモニアが直接切り離されます。
つまり、「尿酸ができる一歩手前で、アンモニアが放出されている」のです。
② BCAA(アミノ酸)の分解
運動が長時間に及ぶと、筋肉は自分のたんぱく質(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)を燃やしてエネルギーにしようとします。
アミノ酸をエネルギーに変える際、アミノ基(-NH2)が外れ、それがアンモニアになります。
☆生成されたアンモニアはどうなる?
アンモニアは体にとって非常に毒性が強いため、そのまま放置されると脳などに悪影響を及ぼします。
そのため、体には以下の強力な解毒システムが備わっています。
肝臓での解毒(オルニチン回路): 血液によって肝臓に運ばれたアンモニアは、無害な尿素に変換されます。
腎臓での排出: 尿素は血液に乗って腎臓へ運ばれ、最終的に尿として体外へ排出されます。
このようにスムーズにアンモニアを無毒化して排出される流れに乗れば問題ないのですが、いつまでたっても細胞の中に留まっているので筋肉が硬くなってくるのです。
☆尿素回路(オルニチン回路について)
尿素回路(オルニチン回路)は、体内で発生する有害なアンモニアを無害な尿素に変えるための、肝臓にある「化学工場」のようなシステムです。
ミトコンドリアと細胞質の2つの場所をまたいで行われる、5つのステップで構成されています。
尿素回路の5つのステップ
1. アンモニアの固定(ミトコンドリア内)
まず、アンモニア(NH3)と二酸化炭素(CO2)が合体し、カルバモイルリン酸が作られます。
この反応にはATP(エネルギー)が消費されます。
2. シトルリンの生成(ミトコンドリア内)
カルバモイルリン酸が、回路のベースとなるオルニチンと結合して、シトルリンになります。
このシトルリンは、ミトコンドリアの外(細胞質)へと運び出されます。
3. アルギニノコハク酸の生成(細胞質)
細胞質に出たシトルリンに、別のアミノ酸であるアスパラギン酸が結合します。
ここで2つ目の窒素が回路に入ってくることになります。
4. アルギニンの生成(細胞質)
アルギニノコハク酸が分解され、アルギニンとフマル酸になります。
補足: ここで出たフマル酸は「クエン酸回路(TCAサイクル)」へと合流し、エネルギー代謝に再利用されます。
5. 尿素の分離とオルニチンの再生(細胞質)
最後に、アルギニンがアルギナーゼという酵素によって加水分解され、尿素が切り離されます。
残った分子は再びオルニチンに戻り、ミトコンドリアへ移動して次のアンモニアを待ち構えます。
豆知識
肝機能が低下すると、この解毒が追いつかなくなり、血中のアンモニア濃度が上昇して「肝性脳症」などの症状を引き起こすことがあります。
お酒の飲み過ぎや疲れで肝臓に負担がかかっていると、このサイクルが滞りやすくなります。